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RUSSELL A. BONHAM

対称こま固有関数を含む積分

本アーティクルは The Mathematica Journal (volume 14, 2012) で発表されたもの で、著作権は Wolfram Research, Inc. に属します。
"This article was previously published in The Mathematica Journal (volume 14, 2012) and the copyright holder is Wolfram Research, Inc."

第一ボルン近似で準弾性電子散乱の強度を評価するために、メタンの回転状態の完全集合に Closure を使用すると、これまで評価されていなかった多くの積分が見つかります。Mathematica を使用して、これらおよび、同じような積分の計算を行ったところ、すべての結果を単純な式で示せることが分かりました。

 

積分計算の詳細

ここでは、

(1)

で定義される、球状行列要素 DJM1M2(a, x, γ) [1, 2 を参照] の平均に関する積分について述べます。これは、固有値 J(J+1) と 縮退 (2J+1)2 からなる、対称こま固有関数です。

関数 は、

(2)

として定義されます [1, 2 を参照] 。

この場合、t は整数であり、0 から分母の階乗が初めて負になるまでの総和です。

ここで、

(3)

は、J (J+1) を固有値に持つルジャンドル多項式 PJ (x) を固有関数とするハミルトニアン演算子で、準弾性電子散乱のインパルス近似で [3 を参照]、メタンなど、球対称こまの回転運動の平均は、次の積分で表すことができます。

(4)

方程式 (3)DJM1M2(a, x, γ) が解であるハミルトニアンの一部ですが、H(x) の固有関数ではありません。H は、インパルス近似の散乱問題の処理で発生します [3 を参照]。

規格化因子 NJ M1M2

(5)

をすべての M1M2 使用した場合、

(6)

になるということを、Mathematica を使用して証明することができました。

ここで、

(7)

とすると、

整数 n > 0 の計算結果は次のようになります。

(8)

「証明」という言葉は、Mathematica プログラムからの結果に基づいています。

これらの式は、すべて正の整数の比として存在し、0 から 18 の J の値に対する方程式 (8) の右辺の結果と完全に一致することが分かります。

C(n) を

(9)

で置き換えた場合、

(1 – x2)nx2n で置き換えた場合と、同じ結果になることに注意してください。

C(n) の定義における (1 – x2)n および x2n に対する因子 を除くと、残りの部分は以下の積分と等しくなります。

(10)

および

(11)

さらに、 を見てみると、

(12)

であるので、 

(13)

と同じ結果になることが分かります。

以下の積分の二重和の式

(14)

および

(15)

を定義します。

これらの結果から C0 が定数である場合、IJ (m, n) = C0 IC (m, n) と考えられます。次のセクションで示すように、m = 0, 1 および n = 0, 1 の場合、J = 1, 2, 3, 4 に対して定数因子 C0 となります。

 

 

実装

関数 d は、 です。

関数 d1d2 は、x に対する の一次および二次導関数です。

関数 h は、ハミルトニアン Hd を処理した結果です。

積分 a を定義します。

関数 int1 は、方程式 (14) 内の積分です。

関数 int2 は、 の二乗の規格化積分です。

関数 s は、M1M2 について、積分 int1int2 の比を合計したものです。

mnJ のさまざまな組み合わせについて、table では IJ (m, n) の厳密な計算 (方程式 (14)) と、提案された結果 IC (m, n) (方程式 (15)) を比較して、このふたつの比は定数であり、この場合、C0 = であることが示されます。table [1, 1] の評価には、しばらく時間がかかります。

 

 

引用文献

R. A. Bonham, “Some Integrals Involving Symmetric-Top Eigenfunctions,” The Mathematica Journal, 2012. dx.doi.org/doi:10.3888/tmj.14-12.

 

 

著者について

Russell A. Bonham 1957年アイオワ州立大学で物理化学の博士号 (Ph.D.) 取得。自由原子および自由分子からの電子散乱に関して、さまざまな側面から 200 以上の記事を執筆。現在、インディアナ大学名誉教授および、イリノイ工科大学非常勤教授。

 

英語原文 (HTML)
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