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更新日: 16/09/27

ローカル測地系 (Local Datums) を理解する

HELP: Understanding Local Datums

あるデータをローカル測地系 (Local Datums) に変換することで、それがどのように変化するかを理解するためには、楕円体 (ellipsoid)、回転楕円体 (spheroid)、および、これらと測地系 (datum) との関係を理解する必要があります。平均海面 (mean sea level) の位置を基準とした理想的な円形の物体が回転楕円体 (spheroid) です。これは、地球上のどの位置をとっても一定ですが、実際の形状は、場所によって重力場が異なることから局所的に様々な起伏が存在します。

Verhoogan による画像。現実の地形学的な表面 (topographic surface) と、
ジオイド面 (geoid、理論的な形状, spheroid)、および、楕円面 (ellipsoid) との違いを示す。

 

楕円体 (ellipsoid) は、大域的 (global) な違いを近似するために使用するものですが、現実の表面には地形学的なずれも存在します。これらのずれを地域ごと (ローカル) に考慮するのに考案されたのがローカル測地系 (Local datums) です。ローカル測地系には、楕円体 (Ellipsoid)、グリニッジ子午線からのずれ (Prime Meridian Shift)、および、X, Y 方向における任意の差分 (offset) が含まれます。ローカル測地系は、地球表面上の特定の地点とその楕円体に適するよう設計されたものですので、ある領域用に設計されたローカル測地系は、他の領域ではうまく適合しません。

Define Coordinate System ダイアログを使えば、ある測地系から別の測地系に変換する方法を選択することができます。ここで選択するのが Conversion Method です。測地系の変換に広く利用されているのは Molodensky 法です。この手法では、3方向全ての軸について2つの測地系の楕円体の間の変位を考慮することによって緯度・経度座標が調整されます。ただし、この手法では2つの楕円体の間の回転の差異については考慮されません。Molodensky 法とよく似た手法に Bursa-Wolfe 法があります。これは、2つの楕円体の変位と回転の両方を考慮するものであるため、取扱うデータによっては Molodensky 法より高い精度になる場合があります。Surfer, Strater では、WGS84 測地系から以下に示す測地系への変換に Bursa-Wolfe 法がサポートされます。

Define Coordinate System ダイアログでカスタム座標系を定義した例

 

測地系を正しく変更しないと、地図が誤った内容で表示されたり、全く表示されない可能性があります。測地系の変更には、ローカル測地系に関する基本的な理解と十分な注意をはらうようにしてください。

 

楕円体 (Ellipsoids)

精度を気にしない世界地図であれば、地球の形状は完全な球体であると仮定したとしても特に問題にはなりません。スケールの小さなマップである限り、それが球体 (sphere) であろうと楕円体 (ellipsoid) であろうと、その違いは地図からは判別できないからです。

しかし、実際の地球の形状は、その回転軸を垂直の向きであるとすると、およそ 1/300 だけ縦よりも横が長い楕円体 (あるいは、玉子型) です。ある程度の精度を要するスケールの大きいマップを作成するには、この形状を考慮に入れる必要があります。

球体 (黒の実線) と楕円体 (青の点線) を重ね合わせた例。

 

楕円体が球体に比べて地球の形状をよりよく近似できるといっても、地球の表面は完全に均一な曲線ではないため、楕円体を用いて地球を表現したとしても、それはあくまで近似値に過ぎません。地図製作者が地域ごとに正確な地図の作成を試みようと、微妙に異なる幾つもの楕円体表現をこれまで使い分けてきたのは、こうした背景があるからなのです。

楕円体は、それに使用する楕円と、その楕円の回転量とで定義します。楕円には軸が2つあります。Semimajor Axis (長軸半径) は、長い方の半径、Semiminor Axis (短軸半径) は短い方の半径になります。Semiminor Axis (短軸半径)、すなわち、短い方の半径を回転することで、回転楕円体が生成されます。

楕円の長軸と短軸をあらわす図

 

Surfer, Strater では、Semimajor Axis (長軸) と Semiminor Axis (短軸)、または、Semimajor Axis (長軸) と Inverse Flattening (1/f) 値 (扁平率の逆数) によって楕円を定義します。扁平率の値は、ゼロから 1 の範囲になりますので、Inverse Flattening (1/f) 値は必ず1より大きい値をとります。扁平率の値 (flattening value) は次式で定義されます:

  • f = (Semimajor Axis - Semiminor Axis) / Semimajor Axis
    扁平率 = (長軸 - 短軸) / 長軸

座標系を新規に定義するには、Assign Coordinate System ダイアログで、New ボタンをクリックします。測地系のパラメータは、Define Coordinate System ダイアログの Datum グループで指定することができます。Ellipsoid (楕円) は、Name (測地系の名称)、Semimajor AxisSemiminor Axis、および、Inverse Flattening (1/f) について、カスタマイズできます。このとき Semimajor Axis, Semiminor Axis, および Inverse Flattening 比の単位はメートルで設定します。楕円体と測地系の定義についてよく分からない場合は、デフォルトの値を使用してください。これらの項目に関する詳しい情報は、以下の Projection References をご覧ください。

 

Projection References

  • Dent, Borden D., Cartography, Thematic Map Design, Wm. C. Brown Publishers, Dubuque, 1990.
  • Greenhood, David, Mapping, The University of Chicago Press, Chicago, 1964, pp. 113-171.
  • Robinson, A.H., et al., Elements of Cartography, Fifth Edition, John Wiley & Sons, New York, 1984, pp. 75-105.
  • Snyder, John P., Map Projections - A Working Manual, U.S. Geological Survey Professional Paper 1395, Washington D.C., Department of the Interior, 1987.
  • Verhoogan, John, Francis., J. Turner, Lionel E. Weiss, Clyde Wahrhaftig, William S. Fyfe, The Earth: An Introduction To Physical Geology, Holt, Rinehart and Winston, Inc., New York, 1970.
  • Coordinate Systems Overview, http://www.colorado.edu/geography/gcraft/notes/coordsys/coordsys_f.html, July 2, 2001.
  • Map Projection Overview, http://www.colorado.edu/geography/gcraft/notes/mapproj/mapproj_f.html, July 2, 2001.
  • Map Projection Home Page, http://www.geography.hunter.cuny.edu/mp/, June 16, 2004.
  • Datums, Ellipsoids, Grids, and Grid Reference Systems, Defense Mapping Agency Technical Manual 8358.1, August 2, 2004.
  • Matching the Map Projection to the Need, http://www.gis.psu.edu/projection/, June 16, 2004.