HOME > ソフトウェアパッケージ > 統計解析/グラフ作成 > Design-Expert (デザインエキスパート) > Stat-Teaser > Stat- Teaser 2010/12 号
新規購入お見積
アップグレードお見積

Design-Expert (デザインエキスパート)
Stat-Teaser

タンブラーとマグの熱いバトル

Tervis 社製のタンブラー

「温かい飲み物はいつまでも温かく、冷たい飲み物はいつまでも冷たく」– これは、テルヴィス・タンブラー Tervis Tumblers (www.tervis.com) 社が自社製品の断熱加工タンブラーに付けたキャッチコピーです。私の息子ハンクは、Stat-Ease でプログラマーをやっていますが、これが本当にそうなのか、実際に試してみることにしました。使用したのは、フロリダにあるテルヴィス社の工場で私が息子のために購入したタンブラーです。

ハンクは、プログラミングの最中よくホットティーを飲んでいるのですが、あるとき二層に断熱加工された Tervis 社製のプラスチック容器を見ながら、熱伝導の研究に沸々と関心が湧き興ってきました。彼は無作為化された実験計画をそれぞれ4回試行し、ホットドリンクの保温性能をセラミック製マグカップ(非断熱加工)と比較することにしました。約 0.5 度単位で計れるデジタル温度計は実験に好都合でした。ハンクは、熱湯を注いでから25分間、2つのお茶の温度をそれぞれ計測しました。

計測時の気温も彼は記録しましたが、計測中に際立った変化はありませんでした。以下の表1に計測時の気温とすべての計測結果を示します。

Run Comments Container T0 deg f T5 deg f T10 deg f T15 deg f T20 deg f
1 29% H, 70.1 F Ceramic 183.5 158.5 145 135 127
2 33% H, 69.6 F Tervis 190.5 168.5 153.5 142.5 135
3 30% H, 71.7 F Tervis 194 167.5 154 144 135.5
4 30% H, 70.1 F Ceramic 184 158.5 146 135 127.5
5 32% H, 70.5 F Tervis 197 171 155.5 145 136
6 34% H, 68.1 F Ceramic 183.5 157.5 145.5 135 127
7 33% H, 68.3 F Ceramic 183.5 162 146 135 127
8 33% H, 68.1 F Tervis 198 168.5 154 143.5 135
表1:経過時間 (0~25分) 毎の温度 (単位:華氏 F)

 

表の一番右の列に注目してみましょう。Tervis 社製タンブラーに入れたお茶の方がいかに温度を保っているかお分かりでしょうか?事実、Design-Expert® で作成したグラフの結果を見てもこのことは明らかです。

図1:25分経過したホットティーの温度をあらわす効果プロット

 

しかし、もっと注目すべきことがあります。経過時間 0 (T0) をご覧ください。セラミック製マグカップに注いだお湯は Tervis 社製タンブラーのお湯に比べて著しく温度が低下しています。これはどういうことでしょう?Tervis の容器はポリカーボネイド製です。セラミックと比べて素材の密度が遙かに小さいものです。つまり、セラミック製マグカップの方が、より大きな熱慣性 (thermal inertia) を示すので、室温の状態から温度を上げてゆくにはそれだけ大きな熱を必要とするわけです。

Stat-Ease のコンサルタント Pat Whitcomb も同じ見解です。彼は同じ結果から図2のような時系列グラフを作成しました。セラミック製マグカップは実験直後に温度が低下するとそれ以降 Tervis タンブラーの温度に追いつくことはないことがわかります。

図2:Tervis タンブラー(緑)とセラミック製マグカップ (赤) におけるお茶の温度低下の時系列比較

 

私はこの結果に胸をなでおろしています。ハンクが温かいお茶を飲める時間が長ければ長いほど、それだけ沢山プログラミングして Stat-Ease に貢献してくれるからです!この実験計画の設計、実施、および、実験の分析を終えたあと、彼は次のように語ります。

「お湯を沸かしてマグに注ぎ、温度を計測しながら同時にお茶を入れるのは一種の曲芸行為です。誤差が生じる余地はいくらでもあります。得られた測定値が思ったより一貫していたので逆に驚いたぐらいです。実験をもう一度やるとしたら、お湯を沸かしてからマグカップに注ぐのではなく、浸水式電熱器を使って温めるでしょう。もうすこし踏み込んで、マグ表面の温度の違いを調べてみてもいいでしょう。Tervis タンブラーは、そのまわりに直接手をあてがって持ち上げることができるので、ひょっとしたらセラミックで手をやけどしちゃうかも知れませんけどね。」

—Mark Anderson, Principal
mark@statease.com

 

混合計画とは何か?何の役に立つのか?

by Mark Anderson.

混合計画の「とっかかり」

実験計画法 (DOE) を本当の意味で理解していない計画立案者があなたの勤務先にいるかも知れません。それは社内の同僚かも知れませんし、取引先のサプライヤーやクライアントであるかも知れません。私はそのような方たちのために「何が自分の役に立つのか」WIIFM (what’s in it for me) という文書を Pat Whitcomb の協力を得て執筆しました。これは、混合計画、応答モデリング、統計解析、数値最適化をより明るい視点から立案するのに役立つ文書です。わたしはこれを『混合計画入門:何が計画立案者に役立つか?』(A Primer on Mixture Design: What’s In It for Formulators?)と命名しました。この入門書はこちら (www.statease.com/pubs/MIXprimer.pdf) から自由にダウンロードいただけます。

以下にその序文を紹介しましょう:

混合物 (mixtures) を液体と同じように考えるのはごく自然なことです。プールの所有者なら誰もが衛生状態を維持するためにそこに含まれる化学物質を注意深く監視するでしょう。しかし、混合物にはセメントや医薬品添加剤 (錠剤の有効成分を裏で支える物質) のような固形の物質もあります。次に示す二つの混合物に関する定義を使えば、物質の相に関するこの違いを棚上げにすることができます:

「混合物とは、複数の成分(構成要素)の組み合わせである。複数の成分を組み合わせることで期待されるひとつ以上の性質を有する最終物が生成される。」

—John Cornell & Greg Piepel (2008)


「混合物を成立させるのは何か?

  1. その因子は、混合物の成分である。
  2. その応答は、量ではなく、比率によって変化する。

上の二つの条件を前提に据えて全体を一定にすれば(等式制約条件)、混合物の応答モデルを成分比の関数に置き換えることができる。」

—Pat Whitcomb (2009)

 

Cornell と Piepel による最初の定義は、生産物とそれに期待される特性 (interest) に関して実践的視点を提供します。計画立案者が(クライアントの要望に応えて!)期待される特性を備えた混合物を開発するのは当然の行為です。これに対して二番目の内容では、混合物に関する条件がもっと簡潔に示されています。こちらの方が運用に適した定義です。Pat は、計画立案者に次に示す簡単な問いを立ててみるよう提案しています:「量を倍に増やすことで、異なる結果が得られるかどうか?」その答えがノーであるような場合、実験手法に最適な選択肢は混合計画となります。たとえば、サングリア(ワイン)をグラスとカラフで飲み比べるような場合を思い浮かべてみてください(ワインのテイスティングでは重要な問題です!)。

 

混合計画に関する誤解 – いくつかの迷信

要因配置計画 (factorial design) しか知らないため、混合物に適したツールがあるにもかかわらずそれを適用しない計画立案者がよくいます。彼らが口にする幾つかの悪い例を以下に示します。(我々はこれを「ニュー・ハンマー病」と呼びます。人に新しい金づちをもたせると、見えるものは何でも釘に見えてしまうことの喩えです。)

  1. 全ての成分を同一の単位尺度で比較しない。*
  2. 要因の割合から生ずる影響は無視する。
  3. わずかな量しか存在しない構成要素は除外する。

これらの神話がいずれもウソであることを見破るために、聖パトリック祭で使うシャムロック(三つ葉)型カップケーキを例にとり、二つの思考実験を検討してみましょう。レシピの最初は、小麦粉1カップ、卵大1個、バター1スティック、砂糖1ポンドの混ぜ合わせです。その後に、色を付けるために、黄色と青の2種類の着色料を混ぜて加えます。

実験1では、4種類の原料それぞれを単位尺度 0.5 と 1.5 をとる2水準因子とし、すべての因子を組み合わせた合計16回 (24) の実験を繰り返します。応答については、味、食感、および、総合評価を9点満点の感覚尺度で評価します。この実験は、一見問題はなさそうですが、実験の両極端の組み合わせでカップケーキを作ることを想定してみてください:

この二つはレシピの絶対量が増加したに過ぎません!相対的な比率は全く同じです。FineCooking.com の料理家 Shirley Corriher が自身で投稿した記事 For Great Cakes, Get the Ratios Right:(ケーキづくりの成功の秘訣は、正しい割合を守ること)で語った発言をここに紹介します。「熟練のケーキ職人なら、まず材料の割合を正確にするための計算をおこなうものです。これをしないうちにケーキを焼くこうなんて夢にも思いません。小麦粉、卵、砂糖、油の割合をうまくできるかどうかがケーキの出来を左右するのです。」

一流のパン職人や料理人なら、このほかに必ず材料の重さをはかります。これによって割合が正確に計算できるようになります。たとえば Corriher によると、卵とバターは割合を同じにするのが良いといいます(彼女によると大きめの卵なら中身の重さは 3.5 オンスだそうですが、キッチンスケールで量れば一目瞭然です!)。

すべての計測が終わったら、いよいよ混合計画を実行できます。結果は、“A Primer on Mixture Design” から引用した以下のようなグラフ(図1)になるはずです。

図1:4成分の混合計画をもとに作成した応答局面の例

 

カップケーキの二番目の思考実験は、色づけに関するものです。ここでは2種類の着色料(黄色と青色)を使います。聖パトリック祭が近づいているので、品のいい明るめの黄緑色になるようにしたいものです。2水準因子の配置しか知らないのであれば、各着色料が取る幅を1滴から2滴とし(色を出すにはこれで十分)、すべての因子を組み合わせた合計4回の実験(22 – 2つの着色料それぞれが2つの水準をとる組み合わせ)を繰り返すことになります。これまでのところ割合に関しては、完全な理解はともかく、その忠告は少なくともお耳に届いていると思います。しかし、混合物に含まれる素材の量がごくわずかであることから、この実験を無視すべきではないかという考えが出てくるかもしれません。これについては再考の余地があります。それは、極めて微量の成分であるにもかかわらず、非常に大きな効力を発することを見落としている点でこの考えは誤りであるからです。台所で子供がもので遊びながら、ほんのわずかな着色料をどこまでも長く伸ばしているのを見たことがあるのではないでしょうか。いずれにせよ、割合に関する同じ問題が出てきたら、もうおわかりかと思いますが、2水準因子計画における2つの極端な組み合わせを考えます:

この二つの組み合わせはどちらも、結局同じ黄緑色になります。人間の目ではその違いを判断することはできません**。同じことを二度繰り返しても時間の無駄ですよね?

この思考実験が混合物を作る人々の思考の糧となることを祈ります。二水準因子計画を選択するかわりに、混合計画を検討してください。Desing-Expert ソフトウェアなら簡単にセットアップできます。混合実験を使えばスイートスポットを素早くみつけだすことができるでしょう。もしそれが見つかれば、統計的に有意な結果がもたらされることでしょう。

*スケーラブルなレシピを配置する伝統的な方法は、パーツ(全体を等分した割合)で配置することです。たとえば、主要成分100パーツに加え、20パーツの添加物、そして、その他10パーツという具合です。これは、共通の尺度を提供しますが、混合計画には良い基準ではありません。パーツでいけない理由は Stat-Ease webinar のスライド “An Introduction to Mixture Design for Optimal Formulations” をご覧ください。www.statease.com/webinar.html に掲載してあります。
**量を問題にするのであれば、Design-Expert の Combined タブから mixture-numeric design を選択してください。

 

記事原文