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トンボの飛行における複雑な流体力学を研究

ライト州立大学の研究者、トンボを真似た昆虫サイズの4枚羽の航空機を開発中。

トンボが飛んでいるところを高速撮影したものです。翅の黒い点は0.5mmのインクマーカーで、さまざまな角度からの撮影をし、3 次元の形状を作成するときに正確な翅の位置を追いかけるのを補助します。
トンボの正確な 3 次元の再現で、胴体の動き、翅のひずみが再現され、Tecplot 360 2009で作成されています。

史上初めて、研究者たちはトンボの自由飛行の詳細な 3 次元の数値シミュレーションを開発することができました。

左側はトンボが飛んでいるところを高速撮影したものです。翅の黒い点は0.5mmのインクマーカーで、さまざまな角度からの撮影をし、3 次元の形状を作成するときに正確な翅の位置を追いかけるのを補助します。

右側はトンボの正確な 3 次元の再現で、胴体の動き、翅のひずみが再現され、Tecplot 360 2009で作成されています。

ほとんどの学生はクラスがあるときに、駐車場などを歩き回っているというのは少し問題があると考えますが、ハイボ・ドン博士の研究室の大学院生にとっては、これは研究の必要項目なのです。

「彼らは何匹かのトンボを捕まえるために、午前中いっぱい外にいます。」と彼は笑います。「研究室にはハイスピードカメラがありますが、撮影する対象がありません。トンボを捕まえるのは大変です。高速に飛びますし、方向転換も上手です。しかし、だからこそそれを研究しているんです。」

カメラの機材は、トンボの飛行を研究するために、ライト州立大学のドン博士の研究チームに与えられた複数年助成の1つです。彼らの長期目標はトンボの飛行を真似た4枚羽のマイクロ飛行物体(MAV)を開発することで、スポーツスタジアムや公共交通機関のような場所で行動を監視するために使うことができ、生物兵器や化学兵器を捜索することを補助します。このような機械は人間が入ることができない危険な火災現場、爆撃場所や狭い場所で被害者を探すのに使うこともできます。

Dr. Dong のプロジェクトを興味深いものにしているのは、高速撮影から再現された時系列で制御点を持つ面を使って、飛行中の 4 枚羽の昆虫の全体の 3 次元のシミュレーションを初めて作成したことです。研究者たちは 2 枚羽の航空機を開発するために、ハチやハエのような 2 枚羽の昆虫を長らく研究してきました。彼らはトンボをモデルにした 4 枚羽の航空機が、より浮遊力があり、より方向転換がうまく、より高速に飛ぶことができることも知っていました。しかし、トンボの体の動き、翅の変形や相互作用、それに続く流体力学の複雑さはあまりに困難で解明することができませんでした。

「最近まで、科学者は昆虫の個別の部分を見ることができるだけでした。例えば、モデル化された翅の動きを見ることはできましたが、翅の変形や複数の翅の相互作用を考えることはできませんでした。我々はトンボのような 4 枚羽の昆虫の流体力学を研究するために、特に体全体の正確な 3 次元シミュレーションに焦点を当てています。空中を移動しているときに、翅と体が相互の関係の中でどのように変形し、曲がるかをみる必要があります。また、渦を見る必要があり、それがどのように形成されるか、どのように翅に影響するかも見る必要があります。異なる条件に自然にどのように反応するかを見る必要があります。これらすべては厳密に正確である必要があります。」と彼は話します。

コンピュータモデルの構築

これは精度の必要性と大量のデータのため、ドン博士のチームにとって遅々として進まない、骨の折れるプロセスでした。最初のステップは十分なシミュレーションツールを開発することで、その次に数百もの昆虫の動きに関する学術文献、研究、観察記録などを使ってそれを検証することでした。

昆虫がどのように離陸、方向転換、巡航、空中静止するかをシミュレートするために必要なCFDデータを収集し、検証するのに3年以上かかりました。これらは膨大な量の微妙な翅の動きを観察する必要がありました。2009年初め、ついに次の段階に進む準備ができました。コンピュータ上で、トンボのすべての動きを再現する十分な精度を持ち、精密な3次元シミュレーションを作成することです。学部生のザック・ガステンは、3 つのハイスピードカメラで、異なる角度からトンボが飛び立つ様子を撮影することから始めました。コンピュータサイエンスの博士課程のクリス・コーラーは、ビデオ画像の点を追跡するために、高度なコンピュータ表示アルゴリズムを使いました。これらの点を使って体と翅を正確な 3 次元モデルに再現するにはAutoDesk Maya を使いました。その結果の 3 次元運動量をTecplot 360に取り込み、飛行のCFDシミュレーションを始めることができました。次に、機械工学の博士課程のゾンシァン・リァンが再現された動きの流体の数値シミュレーションを行うために内製したシミュレーションツールを使いました。*

「視覚的な研究結果として、トンボが飛び立つときの体の動きや翅の変形を含む、正確な動きを表示することができました。検証された数学的なモデルを広げることで、さまざまな環境下で体を持ち上げる力を生み出すために、どのようにトンボが翅をコントロールしているかを理解する自信を持つことができるようになりました。次に、空中停止、方向転換、着地のような他の飛行状態についても、同様なプロセスを繰り返す必要があります。」とドン博士は話しています。

3 次元アニメーションは注意をひきつけ、想像力をかきたてますが、ドン博士のチームはデータの分析に Tecplot 360 で作成された 2 次元画像、プロット、表を多用しました。静止画像は動作をフレームごとに調査するのに役立ちます。XY プロットは翅がどのように力を生み出し、空気がどのように動くかを調べるための力の時間変化をみるのを可能にします。2 次元のクロスセクションは、例えば先端の渦についての詳細な情報を提供し、それらが力の生成にどのように影響するかを示します。

「 3 次元アニメーションは、たぶん、最も楽しい部分だと思います。体を回転させ、構造を観察し、渦を確認し、物理的な理解を深めることができます。しかし、これは物理をベースとした分析であり、多くのプロットとグラフを使います。われわれにとって、2 次元の結果からコツコツと集めた情報はとてもエキサイティングです。」とドン博士は続けます。

4 枚羽根の MAV を実際に目にすることができるのはいつになるでしょうか?ドン博士のチームは、来年中には最初のプロトタイプを完成させることができると考えていますが、実際の商用の製品になるには、まだ5年から7年はかかるでしょう。

「5年というのはそう遠い未来ではなく、それを実現したいと考えている人の多くはまだ現役でしょう。例えば、われわれはライト・パターソン空軍基地の科学者と強い関係を持っています。彼らは公共の安全を守るために、この技術には潜在能力があると見ています。」と彼は話します。

うれしい副作用:未来の科学者にひらめきを提供

Tecplot 360の画像とアニメーションによる予期しなかったメリットは、未来の科学者に向けての強力なリクルーティング用のツールとなったことでした。ドン博士と仲間の研究者たちは定期的にキャンパスを訪れる高校生に研究成果をデモしています。アニメーションと画像は、これらの若い想像力に火をつけるのに役立っています。

「例えば、この夏には、科学者やエンジニアになるように促すキャンプを女子高校生向けに開催しました。彼女たちはこれらのアニメーションにとても興奮したようでした。このような生物学的な問題を視覚化すると、子どもたちにはわかりやすく、とても興奮します。子供達にデータを見せ、そう、大量のデータを見せるとどうなるでしょう。しかし、データをアニメーションに変換すると?子供たちは興味を持ち、何かを理解します。これは科学の複雑さを学びたいと思わせるものなのです。」とドン博士は言います。

* 他のプロジェクト参加者には、ライト州立大学の機械工学科のフイ・ワン博士とマット・メイプルズ、コンピュータサイエンス学科のトーマス・ウィシュゴル博士が含まれます。