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CART (カート)
導入事例

米ファイザー社、ED 診断に CART を活用

米ファイザー社は最先端の研究施設を基盤にした医療分野のグローバル企業で、現在、ED (男性勃起障害)治療研究の最前線にあります。ファイザー社は、ED 症状に対する最初の経口治療薬である新薬「バイアグラ」で FDA の承認を受けたことでも有名です。

多面的な市場調査

ファイザー社は、「バイアグラ」の販売プロモーションと平行して、ED (勃起障害) に対する社会的意識を高める積極的な市場調査活動の遂行を計画します。多くの専門家に考えられているように ED は表立って診療されたり治療されることのない心理的に非常にデリケートなトピックです。ファイザー社はこの新製品をうまく世に出すことができるようにこういった問題を考慮した多面的なアプローチをとります。

ファイザー社は、掛かり付けの医師、泌尿器科医、その他の専門家が使用する診断ツールをバイアグラを広めるために開発しています。このようなツールのひとつに、国際勃起機能評価と呼ばれる問診票があります。これは、 ED の存否の指標となる自己施行型の診療検査票で、5つの質問から構成されています。SHIM:IIEF-5 は、治療法の選択に関する問診とあわせることによって、より進んだ ED の診断が即座に実行できる臨床上の支援ツールとして役立ちます。この診断法は、ファイザー社の徹底的な専門研究の努力と Salford Systems の「CART」のような洗練されたデータ分析ツールを組み合わせることにより開発されました。

 

問診票の開発

ファイザー社は、ED の専門家として国際的に著名なレイモンド・C・ローゼン博士ひきいる ED 研究チームのための助成金を提供しました。この研究の成果として ED を判定するための多次元の尺度「国際勃起障害指標 (IIEF) 」が開発されました。この国際勃起障害指標 (IIEF) は、バイアグラの臨床試験において最も有効な尺度となり、1997年には UROLOGY 49:822-830.1誌上で公表されています。研究や臨床の現場における使用目的のため、この質問票は、自身で診断できる 15項目の尺度からできています。この尺度は、異文化間でも有効であり、計量心理学的にも妥当性があり、ED 患者の変化にあわせて治療法を見つけることのできる能力をもちます。IIEF は、男性の性機能に関する次の 5 つの領域を判断の対象とします。勃起機能、オーガズム機能、性欲、性交中の満足、達成後の満足。SHIM:IIEF-5 はこの IIEF 尺度を ベースにしています。

 

情報の正確さと時間の短縮を両立

臨床研究の終了後、ファイザー社は国際的な市場調査を実施しました。掛かり付けの医師や泌尿器科医に対して IIEF の使い勝手がどうであるか、現場で聞き取り調査を行うものです。調査結果の概要は、IIEF をより簡易にしたものの方が、医師や患者に広い支持を得られ、 かつ、ED 患者の特定に役立つ価値のある診断ツールにできるであろうというものでした。ファイザー社はこの調査結果を受けて、 信頼できる統計手法を使用して15項目からなる IIEF を ED2 NIH (米国立衛生研究所)の定義に準拠し、かつ、ED の存否をよりよく識別できる5つの質問に絞り込むよう研究者に指示しました。

「我々は、豊富に集められた情報と統計解析技術を駆使して、NIH のED定義に準拠した診断上最も効果的な5つの質問を特定しました」と、ファイザー中央研究所統計学グループ生物測定学担当の取締役、ジョセフ・C・キャペレリ博士は語ります。「また、 ED の存否を識別できる最良の境界点(cut-off point)を特定する客観的な方法を我々は必要としたのですが、Salford Systems 社の CART の機能は、この最適な境界点を特定するのに非常によくマッチしました。」

SHIM:IIEF-5 は、ED と診断された男性4回の検査のデータと、ED歴のない男性を対象とした2つのデータを使用して開発されました。SHIM:IIEF-5 の評価として用いられたデータには 1,152 人の男性が対象として含まれます。このうち 1,036 人が ED 患者で、116 人が非 ED 患者です。事前データとして、男性は以下のような基準を満たすことが求められました。18歳以上であること、安定していること、過去6ヶ月間の性関係があり、6ヶ月間以上の ED 診断を受けていること。対象となった ED と診断されてはいないグループは、ある診療所の外来患者コミュニティのボランティアによるものです。

 

成功の秘訣

集められたデータは、CART とロジスティック回帰法を使って分析されました。ED 存否の識別能力という観点から、IIEF の各15項目の相対的重要度 (relative importance) の評価に CART が使用されました。

キャペレリ博士のおこなうようなデータ解析に必須なツール Salford Systems 社の CART は、世界的に有名なスタンフォード大学とカリフォルニア大学バークレイ校の統計学者によって開発されたオリジナル CART コードを基盤にした確固たる理論的背景をもつ高性能ツールです。このソフトウェアは、自動的にすべての変数を同時に考慮し、データを二進木法により分類します。一連の分岐は、わかりやすく決定木(decision tree)として表示されます。CART は「誤分類率」、つまり、誤った分類項目にサンプルが分類される可能性をもっとも低くするような木構造を自動的に選択することによって最適化を行います。「CART は、多変量のフレームワークにあるすべての項目を同時に評価することができるので、IIEF 15項目の相対的重要度の序列化をおこなう際に欠かすことのできないツールでした。」と、キャペレリ博士は語ります。「ED / 非 ED をいかにうまく分類できるかという項目の序列化を CART はほんのわずかな時間で実行しました。」

 

質問の選定

キャペレリ博士はモデルの妥当性に確信を抱けるようになると、次なるステップは上位にランク付けされた質問が NHI の ED 定義に適合するかどうかの評価です。キャペレリ博士とファイザー社の仲間たちは、CART による計算結果と NHI の ED 定義の間に確固たる一致を確認しました。数値化によるこのような裏付けは、NIH の定義と CART の出した結果の有効性を背後から支持します。特定されたこの5項目と診断結果は、やがて発行される専門誌において注目を浴び議論されることが期待されます。

 

得点システムの市場調査

質問を選定した次のステップは、簡単に施行できる診断法を開発することでした。キャペレリ博士は、SHIM:IIEF-5 において評点以下の男性が ED として分類され、その点より高い評点の男性は勃起機能はノーマルであるとして分類することができるような境界点(cut-off point)を見つけようとしました。さらに CART においては、得られた結果をさらに強固なものにするために、特性曲線を操作できるロジスティック回帰が活用されました。ただし、その曲線は、最終的な結果としての境界点ではなく一連の可能性として生成されます。そこでキャペレリ博士は、高い感度(ED を正確に特定する高い確率)と特異性(ED でない人を正しく特定する高い確率)をもつ客観的な SHIM:IIEF-5 値を決定できる診断法を CART を使用して開発しました。この診断法は、実施が簡単であることと、すぐに計算できることを目的としてつくられました。

 

結果の検証

モデルが完成したら、キャペレリ博士は、SHIM:IIEF-5 モデルの新しい生データでの使用をより確実なものにするために CART の交差検証法を使用しました。交差検証法において、CART は無作為に選択された 10 パーセントのデータを自動的に検証用サンプルとします。残りの 90 パーセントのデータ「学習用サンプル」は、モデルの生成に使用されます。そして、検証用サンプルは、結果に妥当性があるかどうかを確かめるために学習用モデルに投入されます。妥当性を検証するこのプロセスが完了するまでの回数はユーザーにより変更可能ですが、CART のデフォルトモデルの 10 回施行しただけでもその結果は非常に堅牢です。キャペレリ博士は、データによってオリジナルの結果が説得力のあるように裏付けられていることを確信しました。

「我々は、交差検証法による誤分類表とオリジナルの結果とを比較してみました。」キャペレリ博士は語ります。「これら2つの誤分類表はお互いに非常に類似しており、感度と特異性の両面においてほぼ一致していました。」

 

あなたの健康のために

ED 診断ツールの研究は、患者の生活の質的な向上、寿命の延長、より健康でより充実した生活といった問題へのファイザー社の取り込みによって拍車がかけられました。表に出にくい状況にある ED 診断の判別ツールとしての SHIM:IIEF-5 は、診断ツールとしても「バイアグラ」の普及活動において大変重要な位置を占めます。

「男性の勃起機能障害という問題は、たいへんデリケートなテーマです。我々の研究で明らかになったのは、使いやすく、信頼性が高く、かつ精度の高い道具こそ、このような症状の診断に欠かすことのできないものであるということです。」と、キャペレリ博士は語ります。「患者のスコアが機能障害の存在を示した場合、医師はそれをきっかけとして症状についてそこからさらに深く調べることができます。そして、患者の健康、自尊心、生活の質、および、人間関係の改善につながる治療方法について話し合うことになります。診断の援助や、症状の治療のための科学的な手法を開発し運用することは、患者の健康を改善することのできるひとつの方法であるということをファイザー社における研究を通じて我々は確認しました。CART のような解析ツールによって、データに対する我々の洞察力が高まり、我々のもつ資源をより有効に利用することができました。」

参考文献:

  1. UROLOGY 49:822-830 article: "The International Index of Erectile Function (IIEF): A Multidimensional Scale for Assessment of Erectile Dysfunction" by Raymond C. Rosen, Alan Riley, Gorm Wagner, Ian H. Osterloh, John Kirkpatrick and Avanish Mishra.
  2. NIH Consensus Development Panel on Impotence: Impotence published by the Journal of the American Medical Association 270:83-90, 1993.